自毛植毛手術とヘアサイクル(毛周期)

人間の頭髪の本数は、人種や性別によって違いますが、およそ10万~15万本生えているといわれています。白人や黒人に比べ日本人をはじめとした黄色人種は、髪が太く、本数は、逆に白人、黒人の方が多い傾向にあるようです。ですから、似合う髪型も変わってくるのです。

さて、そんな髪の毛ですが、10万~15万本はずっと生え続けているわけではなく、それぞれの髪の毛が、生えて、成長して、抜け落ちるを繰り返しています。その繰り返しを「ヘアサイクル(毛周期)」と呼んでいます。

 

「ヘアサイクル(毛周期)」は、基本的に「成長期」、「退行期」、「休止期」に分類されます。

 

「成長期」は、その名の通り、髪の毛の生え始めから、成長が止まるまでの時期を指します。髪が伸びてくれば、普通は、床屋や美容室でカットされてしまうことがほとんどでしょうから、1本の髪がどれくらい成長し続けるかをあまり意識されたことは、ないのかもしれません。この期間は、諸説ありますが、3~7年と言われています。

 

「休止期」は、毛根が退化してから脱毛するまでの期間で、2~4か月と言われています。

 

そして、「成長期」から「休止期」にいたる1~2週間を「退行期」としています。

 

ほぼ全ての髪が、「成長期」→「退行期」→「休止期」→「成長期」・・・というこの「ヘアサイクル(毛周期)」を繰り返していますが、当然、同じタイミングではなく、それぞれの髪の毛によって誤差があります。

 

もしすべての髪の毛が同じタイミングで成長したり、抜け落ちたりするなら、3~7年に一度、全てが抜け落ち、スキンヘッドで過ごし、また一斉に生えてくるということになるのでしょうが、実際にはそんなことはありません。

 

普通の状態では、髪全体の80%~90%が成長期にあり、退行期が1%程度。そして残りが休止期あるといわれています。

 

例えば、総本数が、10万本の男性がいて、休止期にある髪の毛がその12%、12000本あったとします。それが、4か月、120日間で脱毛するとしたら、1日あたり平均100本程度脱毛することになります。仮にこの方が、ある日、200本の脱毛があったとしても、それが継続的でなければ、「ヘアサイクル(毛周期)」から言えば、許容範囲の誤差で、当たり前と言えます。

しかし、これが、一日ではなく、継続的に200本の脱毛が続くようなら、その場合は、異常脱毛も考えられますので、専門医に相談をしてみて方が良いかもしれません。

 

 

ところで、誤解されている方も多いのですが、自毛植毛手術は、単純に髪を植え付けるだけで、植え付けた髪が抜けてしまえば、また髪を植え付けなくてはいけないものだと考えている方もいます。

 

確かに人工毛を移植した場合は、その通りだと言えます。しかし、自毛植毛手術は、「ヘアサイクル(毛周期)」を司る組織ごと採取して、髪を増やしたい場所に移植するので、基本的に一度抜けてしまっても、また、生えてきます。移植された髪が成長、退行、休止を繰り返します。

 

そういう観点からみれば、自毛植毛手術は、単純な髪の移植というより、「ヘアサイクル(毛周期)」の仕組みを移植する手術といった方が、説明するときに誤解が少ないかもしれません。

 

移植した髪が、抜けても生え変わることは、自毛植毛手術の大きな特徴になります。

自毛植毛と人工毛植毛

植毛には大きく分けると《人工毛髪》を使った植毛と、《自分の毛髪》を使った植毛に分けることができます。大きな違いというのは、人工毛髪なのか自分の毛髪なのかというところです。まず、人工毛髪を使った植毛法は、比較的人体に馴染みやすいとされるナイロンやポリエステルなどを使った合成繊維でできた人工毛髪を、薄い部分の頭皮内に結びつけるように植え込む手術です。この移植に使われる人工毛は、自分の髪に合った色合いや希望の髪型に合わせた長さを自由に作り出せるので、植毛したその日から違和感なく薄毛をカバーすることができます。また、移植する本数も限度がないのでかなりのボリュームアップが可能になります。この人工毛髪による植毛の大きなメリットがこの《すぐに薄毛がカバーできる》という即効性と《希望の長さや髪の毛の量を植毛できる》という点です。

これまで一般的に“植毛”と聞くと多くの方がこの人工毛髪による植毛を連想され、植毛したらすぐに薄毛が隠せる・・・というイメージだったと思います。

 

ただ、この人工毛植毛にはデメリットが存在し、植毛後大きなトラブルを抱える可能性が高いのです。では、一体どんなデメリットがあるのかというと、人体には体内に異物が侵入すると身体を守るために異物を排除しようとする免疫システムが働きます。これは体内にウィルスや細菌などが侵入しようとした際に、リンパ球などがそれを排除しようと体外に追い出そうとする働きです。こうした免疫システムにより移植された人工毛髪は異物と認識され体外へ追い出す働きをするのです。そうなると、せっかく植毛した人工毛は徐々に抜け落ち始め、1年もすると80%ほどが抜けてしまうことに。そうなると、また抜けたところへ移植しなくてはならなくなり、その度にコストやメンテナンスが必要になり精神的にも経済的にも、また身体的にも大きな負担になってしまうのです。

 

また、それだけではなく人工毛は成長するわけではありませんので、毛穴に皮脂や汚れなどが溜まってしまい、そこから細菌が入り込んで感染症などの皮膚トラブルを起こしてしまいます。そうなると植え込まれた人工毛を抜去しなくてはならなくなり、酷い場合は頭皮が慢性的な炎症や化膿といった皮膚トラブルが続くことで、頭皮が線細化し硬くなってしまい、血流が悪くなってしまいます。そしてせっかく残っていた自分自身の毛髪が抜けてしまい2度と生えてこなくなってしまいます。またこの人工毛を使った植毛は、すぐに抜けてしまわないよう頭皮の深い部分まで差し込み特殊な結び方で固定しているため、皮膚トラブルを起こしてしまったからといって簡単に抜くことができないため、切れ毛になったからといって簡単に結んでいる部分を抜き取ることも難しく、感染症などが頭皮の深部まで及ぶことになります。

そうなると異物反応によりもっとひどい状態になり、頭皮が硬く腫れてしまいまた植毛しても同じような皮膚トラブルを繰り返してしまうのです。そうなると感染症や炎症を改善するために移植した人工毛髪を全て抜去しなくてはならないということになります。

日本国内においてこの人工毛による植毛を行っているところが数カ所あるようですが、植毛の先進国であるアメリカのでは、その人体に悪影響を及ぼす人工毛髪を使った植毛手術は法律で禁止されているほどです。

 

《自毛植毛》とはまさに文字の通り“自分の髪の毛”を使って植毛する外科手術のことです。

移植に使われる毛髪は《AGA(男性型脱毛症)》の原因となる男性ホルモンの影響を受けにくい後頭部や側頭部の髪の毛を、髪の毛を作り出す組織を毛包ごと採取し、薄い部分へ移植する薄毛の外科的治療法です。

 

AGA(男性型脱毛症)の原因とされる男性ホルモンの影響を受けない後頭部・側頭部の毛髪は、移植後もその性質は変わることがないため、一度生着すると半永久的に生え変わり続けます。この自毛植毛手術には大まかに分類すると、メスを使用してドナーとなる後頭部の毛髪を頭皮ごと帯状に切り取り、それを1株単位に切り分けて移植する《FUT》という手術方法とメスを使用せずストローのような細い管状のパンチという医療器具を使い、後頭部の毛髪を毛包ごと丸くくりぬいて採取し移植する《FUE》に分けられます。

 

どちらの方法もメリット・デメリットがあり、メスを使う方法《FUT》の場合のデメリットは後頭部の頭皮を帯状に切り取り縫合するため、線状の傷跡が残ってしまいます。また、術後の痛みについても後頭部を切除・縫合するため、しばらくは痛み(鈍痛)が続いてしまいます。メリットは比較的短い時間で手術が終わることです。後頭部から移植に使われるドナーをいっぺんに採取するのでFUEに比べて短い時間で受けられるというわけです。また、採取したドナーを1株ずつに株分け(切り分ける作業)するのですが、高い技術を持った熟練されたスタッフであれば、株(グラフト)を傷つけることなく切り分けることが可能になり、そのことで移植毛の生着率も格段にアップし移植された毛髪はしっかりと生えてきます。

《FUE》の場合メリットとしてはメスを使用しない(後頭部を切らない)ので痛みが少ないということです。極細のパンチを使用して後頭部から直接移植毛を採取するため、メスを使用して頭皮を切り取る方法と異なり、痛みも少なく手術の傷跡も小さな丸い点のように目立たないものになります。つまり、FUTの手術しばらく続く痛みに比べ、ダウンタイムも少なく治りも早いというのが特徴になります。デメリットは担当する医師の技術によって移植毛の生着率が変わるということです。パンチを使って後頭部から移植毛(グラフト)を1本ずつ採取するのですが、この時点でグラフトに傷をつけないよう細心の注意を払いながら且つスピーディーに採取しなくてはなりません。採取の時点でグラフトを傷つけてしまうと移植毛の生着率は大きく下がってしまい、移植しても抜けてしまい生えてくることはないということです。もう一つは後頭部からグラフトを採取する際に後頭部を短く刈り上げなくてはいけないことです。これは短時間で正確にグラフトを採取するために髪を短く刈り上げなくてはならないからです。最近ではこの後頭部の髪の毛を刈り上げずに行う方法もできており、刈り上げることに抵抗のある方や女性の方などには最適な方法といえるでしょう。

 

また、移植部位の作成(移植する毛穴を作る工程)についても2種類の方法があり、一つは極小のメスを使用してひとつ一つ移植孔《スリット》を作っていく方法と、もう一つはFUEで使用される管状のパンチを使って移植ホールを開ける方法があります。クリニックによってはこの両方を取り入れているところもあり、生え際などのより微細なデザインが要求される部分などにはスリットを適応、全体的にはパンチを使用した移植ホールといったより細かな仕上がりを実現するために使い分けしているところも存在しています。