自毛植毛手術 〜FUEとFUTどちらを選ぶべきか〜

自毛植毛の手術には大きく分けて2種類の手術方法があります。ひとつはFUT(Follicular Unit Transplantation)という方法で、移植のための毛髪をドナーとして後頭部から皮膚ごと切り取り、それを手作業で移植するためのグラフトを作成するために、毛包単位で株分けし、薄い部分へ移植する方法。いわゆる“メスを使用して後頭部を切る方法”です。移植するための移植孔の作成には、細いメスを使ってスリットを頭皮に入れ移植孔を作成し、そこへ植え込んでいきます。ドナーを採取した後頭部は皮膚を縫合します。

もうひとつの方法FUE(Follicular Unit Extraction)とは、FUTのようなメスを使用せず、パンチという器具を使って後頭部から毛母細胞を含む毛包単位に1本ずつくり抜いて移植毛を採取する方法です。移植孔の作成には同じようなパンチを使って頭皮に孔を開けていく方法と、小さなメスを使用してスリットを頭皮に入れて作成する方法があります。

どちらもメリットがあるので、移植する部位によっては両方を使い分けているクリニックもあるようです。自然な仕上がりを求められる細い髪の毛が多い生え際などは、スリットで移植孔を作成、前頭部や頭頂部などの太くてボリュームを出したい部分はパンチを使用しているようです。

 

どちらもメリット・デメリットがあります。まずFUTの場合、後頭部を幅2〜3センチ長さが20センチ(移植する本数によっても異なります)のサイズで皮膚を切り取り、その採取した部分は縫い合わせるのですが、その縫い合わせたところが線状の傷跡として残ってしまいます。当然、後頭部をメスで切っているので、手術後しばらくは痛みが残ります。実際にFUTを経験された方の多くの方が“しばらくは痛みで仰向けでは寝ることができなかった”というほど痛みが残るようです。また、後頭部に線状の傷跡が残ると説明しましたが、縫い合わせている部分に常にテンションがかかり(皮膚が上下に引っ張られる)、痛みが継続し続けその傷跡が広がって大きく目立つ傷跡になることもあります。FUTは後頭部を切除しているため、手術後のダウンタイムが長いという点も挙げられます。これがFUTのデメリットと言えるかもしれません。

メリットはFUEに比べ一度に多くの本数を採取・移植できるということです。また、後頭部からドナーを採取する際に髪の毛を刈り上げることがないということ、手術後はある程度の長さの髪の毛であれば採取・縫合した部分は髪の毛で隠せるということです。

 

一方FUEのデメリットは、一度に移植できる本数が限られるということです。FUEの場合パンチを使って毛根ごと1本ずつ丁寧に採取するので、どうしても時間がかかってしまうからです。このパンチを使って毛根を採取するのですが、この時点で高い技術と経験がない医師が行うと移植毛(グラフト)を傷つけてしまい、移植しても移植毛が損傷しているため生着しないということもあります。最近では高い技術と豊富な経験と症例数を持った医師が存在し、一度の手術で3,000本以上の移植を行う“スーパーセッション”を実現しているクリニックもあるようです。FUEの手術を選ぶ場合は、こうした高い技術を持つ医師がいるクリニックを選ばなくてはいけないということです。

 

また、このFUEの大きなデメリットといえるのが“後頭部を刈り上げなくてはならない”ということです。これは後頭部から移植するグラフトを採取する際、髪が長いと髪の毛生えている方向や流れを把握できないため、採取するグラフトを傷めてしまうことがあるのです。

そのため採取しやすいよう後頭部を刈り上げなくてはいけないということです。髪の毛を短く刈り上げることに抵抗がある方や女性の方などは、FUEを躊躇される大きな要因かもしれません。最近ではこうした後頭部の髪の毛を短く刈り上げずに行うFUEの方法が出てきているので、後頭部を短く刈り上げたくない方にはそちらも検討された方がいいかもしれません。

 

FUEは“痛みや腫れが少ない”ということがメリットといえるのではないでしょうか?

自毛植毛は外科的手術ですから、植毛をお考えの方の中にはこの“痛み”や“腫れ”が気になって迷っているという方も多いようです。手術に使用するパンチは口径が0.6mm~1mmと極細の筒状の器具ですから、傷跡も1mm以下の目立たないものですから、患者の体への負担もFUTに比べ格段に少ないので痛みも腫れも少ないというわけです。

 

FUT・FUEそれぞれメリット・デメリットがあります。手術をお考えであればこうしたことを踏まえ、実績と経験値の高い医師が在籍しているクリニックでカウンセリングを受けましょう。もちろんいくつかのクリニックへ相談に行くことも重要といえます。

自分の薄毛や頭皮の状態や、毛の状態に合わせた植毛方法を選ぶことが大切になります。

分け目の治療について

分け目の相談は、男性からもありますが、女性から相談が多いものの一つです。内容は、「地肌がすける」、「ボリュームがない」などのお悩みで、技術的に難度の高いものもあります。

女性は、分け目を頻繁に変える方もおりますが、同じ髪型、同じ分け目を繰り返しそれが原因で薄毛になることもあります。特にポニーテールなど髪をまとめる髪型は、それが顕著で牽引性脱毛とも呼ばれます。この場合は髪型を変えることにより、改善が見込めます。

 

男性の分け目の治療の場合、原因がAGAであれば、AGA薬で解決できることも多いのですが、女性の場合は、AGAのように脱毛のメカニズムがある程度解明されているものではなく、びまん性脱毛症のひとつ、CTE慢性休止脱毛症のようにメカニズムが不明なものが多くあります。これは特効薬がない状態ですから、対処が難しいもののひとつです。

 

しかし、そういうものだからこそ、基本は、オーソドックスに手術と薬の併用になります。

 

女性の分け目の治療において手術での移植毛の採取場所は、一般に後頭部が使われます。AGAの治療では、AGAの発症に関連する男性ホルモンの影響を受けづらい後頭部の髪が使われるのですが、先にお話しをしたように女性に多いCTE慢性休止脱毛症では、後頭部の髪だからと言って、CTE慢性休止脱毛症が起こらないということはありません。

 

しかし、それでも後頭部の髪は他と比べ、脱毛しづらいようです。そのため、移植毛の採取時は、経験測での判別になりますが、強い毛髪を選択して採取しています。

 

また、移植する際も繊細な技術が求められます。例えば、移植毛を植え付けるための穴(ホール)を作成する際も侵襲の少ない手術、つまり、移植する場所のまわりの皮膚や毛髪に悪影響を与えないようなデリケートな手術が求められます。配慮の足りない手術だとこのストレスの影響で、新たな脱毛の原因になってしまうこともあるからです。

 

特に女性の手術では、デザインはもちろんですが、どの場所にどの移植毛を移植するかの選択も大切です。いくら生命力が強い太く丈夫な移植毛であっても周りの毛が細い場所では不自然に見えてしまいます。つまり、男性の自毛植毛手術以上に繊細な美的センスが求められます。

 

このように分け目の手術、特に女性の手術では、男性患者と同じような手術を行っても

手術を受けた女性に満足していただくことはできません。そのため、上記のような様々な要素を考慮し、経験のある施術者が、繊細な技術と美的センスを持って行わないといけないのです。

毛髪について

現在では、自毛植毛手術の認知度もあがり、AGAに関するTVCMもよく見かけます。そのため、何となく、髪についての研究が十分に進んでいるように感じます。しかし、実は、髪の生え変わりが継続される仕組み、脱毛のメカニズムなど厳密に言えば、髪についてまだまだ解明されていないことがたくさんあります。

 

そもそも頭髪は、10万本程度生えているといわれています。猿人からの進化の過程で、体毛が薄くなる一方、頭部にはそれだけの毛髪が残ったのです。

 

理由は、様々考えられていますが、いくつかの役割のためだとされるのが一般的です。

 

一つ目役割として、「頭部への物理的な衝撃への保護」が挙げられます。頭部は、頭蓋骨でおおわれているものの、他の部位と比べ脂肪や筋肉が少なく、毛髪は、衝撃保護の緩衝材として役立っています。

 

二つ目としては、「有害物の排泄」の役割もあります。この役割は、あまり知られていないかもしれませんが、毛髪には、水銀やカドニウム、ヒ素など体にとって有害な重貴金属を取り込んで、体外に排出させる働きがあります。禁止薬物などの使用者の検査で毛髪が使われるのは、この役割があるからです。

 

三つ目としては、「紫外線からの保護」が挙げられます。強い紫外線を浴び続けて、日焼けを通りこして火傷に近いダメージを受けたことがある方もいるかもしれませんが、それほど強い日差しでなくても、紫外線を直接浴び続けると皮膚がんのリスクが高まります。日本人は黒髪ですが、黒は紫外線を吸収効果が高い色で、日差しの強いエリアは、黒髪、弱いエリアは、金髪になるという研究もあります。

 

四つ目は「体温調節機能」が挙げられます。日よけでの温度調節は、「紫外線からの保護」の部分と重なる部分もありますが、それ以外の機能として、髪の一本一本に空気が含まれていて、それにより空気の層を形成し、体温の保持に役立てます。

 

五つ目は、「ファッションとしての役割」が考えられます。これは、髪型や髪色を自分に似合うよう変えることで、他者に良い印象を与えることです。サケが繁殖期に体色を変化させたり、繁殖期の鳥類が鮮やかな羽を広げたりするのと同じようなことなのかもしれません。

このような役割を持つ髪の毛ですが、先に述べたようにまだまだ十分に研究が進んでいるとは言えません。しかし、新たな技術の開発も進んでいます。2018年の理化学研究所と協力企業の発表では、髪の毛を生み出す毛包という小さな器官の研究が発表されています。この研究では、毛包のもととなる毛包原基を研究チームで作成し、それを毛のないマウスに移植したところ、毛包が再生し、毛髪が生えてくるというものです。これはマウスでの実験ですが、実際に毛髪をはやすことに成功したわけで、大きな第一歩と言えます。ヒトでの臨床研究の結果は、まだ報告されていませんが、成功すれば、毛髪の悩みは一気に解決されるかもしれません。

自毛植毛と増毛法のメリット・デメリット

現在、薄毛の解消法として挙げられるのが《自毛植毛》《人工毛植毛》《カツラ(ウィッグ)》

《増毛法》《薬》。最近ではテレビコマーシャル等でタレントを起用し、大々的に広告を展開し、名前を聞けば誰でも知っているカツラメーカーが勧めているのが《増毛法》です。

以前のようなカツラのコマーシャルはほとんど見られなくなり、各カツラメーカーが力を入れています。どうしてもカツラというとイメージ的にマイナスなこともあり、男性のカツラの利用者が減ってきていることも、この増毛法にシフトしてきたと思われます。

逆に女性のニーズが増えているのがカツラ、今ではウィッグという名前に変えてマイナスなイメージを払拭して年配の女性を中心に利用者が増えているようです。

 

ではこの増毛法ですが、どのようにして髪の毛を増やすのかというと、いわゆる結着増毛法という方法で、現在残っている自身の髪の毛に2〜4本の人工毛がついたユニットを結びつける方法です。ですから1〜2時間であっという間に薄毛に見えなくなります。そこがこの増毛法の一番のメリットと言えます。また、自分の髪の毛の色に合わせることもできますし、長さも希望の髪の毛の長さにすることもメリットといえるでしょう。

ただし、すでに髪の毛が存在していない場合には結着させる土台が作れないため、薄毛のパターンによっては効果を発揮できないというデメリットがあります。

例えば生え際から前頭部にかけて薄毛が進行している場合では、この増毛法で前頭部、生え際の薄毛をカバーリングすることはできません。頭頂部も全く髪の毛がない状態の薄毛の場合も、そこだけ増毛することはできません。ただ、周りに残っている髪の毛に増毛してヘアスタイルでカバーするということはできます。この増毛法はどちらかというと、薄毛ではあるが全体的にまだ髪の毛が存在している人、髪の毛の分け目が薄くなっている人等に適した方法といえます。前頭部から頭頂部まですでに髪の毛がない人には適さない方法です。

この増毛法は自分自身の髪の毛に結びつけているため、既存の髪の毛への負担がかかるということ、また髪の毛は伸びてくるので結びつけた人工毛をまた髪の毛の根元の部分まで下げることが必要になります。つまり、定期的なメンテナンス・ランニングコストが必ずかかるというデメリットがあります。

また、この増毛法を使っている間は自分の希望する美容室や理容室にはいけないということ。特殊な方法の増毛ですから、街の美容室などでは対処できないので、定期的なメンテナンスの際にヘアカットするということになります。

つまり、この増毛法は1回着けたら終わりという薄毛の解消法ではないということになります。

 

一方、自毛植毛の方ですがメリット、デメリットどちらも存在します。

まずメリットからいうと、自分自身の髪の毛を移植するので頭皮のトラブルが起きないということです。人工毛による植毛だと合成繊維でできた毛髪を頭皮に埋め込んでいくため、体に異物が入ってきたことによる異物反応、拒否反応を起こして炎症など皮膚トラブルを起こしてしまうことがあるのですが、自毛植毛の場合その心配がないというわけです。

 

もう一つのメリットは一度移植した毛髪が生着すると、半永久的に髪の毛が生え続けるということ。また、カラーリングやパーマもかけることができます。また、面倒なメンテナンスも必要ないので、手術費用以外は一切かからないという点もメリットといえます。

 

ではデメリットはというと、まず外科的な手術なので腫れや痛み等のダウンタイムがあるということです。ただし、痛みや腫れといったものは個人差があるので、必ず腫れるとか痛いということはいえませんが、デメリットして考えておくべきでしょう。

また、保険適応外の外科手術ですから手術費用が高額ということです。移植する本数にもよりますが、平均的な費用として150万〜200万円くらいの費用を払わなくてはいけないということです。カツラや増毛法などのメンテナンス・ランニングコストは一度には払うことはありませんが、長期的な利用を考えた場合、自毛植毛よりも高額になるので自毛植毛の費用が高額とは一概には言い切れませんが、そのくらいのお金がかかるということです。

 

デメリットとしていえることがもう一つ、髪の毛が生え揃うまで8ヶ月〜12ヶ月かかるということです。増毛法の場合、その日に髪の毛が増えたことを実感できますが、自毛植毛の場合、しっかりと生着、成長し長さが生え揃うにはそのくらいの時間が必要になるのです。ただ、生着し生え揃えば自分自身の髪の毛ですから、仕上がりも自然ですし、何より本当に意味で薄毛を解消できるということが、自毛植毛の最大のメリットといえるでしょう。

移植密度について

あまり考えることではないかもしれませんが、一般の方の髪の密度は、1平方センチあたり、150本~200本と言われています。これは人種によって変わり、東洋人より欧米人の方が多いと言われています。

髪は毛穴から生えているわけですが、一つの毛穴から1本~3本生えています。ですから、だいたい頭皮には1平方センチあたり、80~100の毛穴があるわけです。

自毛植毛手術では、毛髪を毛穴ごと組織(毛穴の奥にあって表面に見えない髪を作り出すシステム一式)を採取し、薄く見えやすい生え際などに移植する手術です。この毛穴ごと採取したひとまとまりの組織をグラフト(=株)と呼んでいます。

 

もし、一般の方と同じ密度で毛髪を移植するなら、1平方センチあたり、80グラフト~100グラフトを移植すると、大まかに言えば、同じようになるというわけです。

 

しかし、多くの専門クリニックでは、移植する場所の周りの髪へのマイナスの影響を考慮し、25~30株を移植しています。通常の方の25%~33%程度しか移植していないわけです。だから、手術が成功してもスカスカに見えるのは、当たり前です。

 

 

これはあくまで経験則になりますが、自毛植毛手術を受ける方が、100%満足と言えないまでも、これなら様子を見ても良いかと考えるレベルの髪密度を想定すると、1平方センチあたり、40株~50株は移植しなければならないと思います。つまり、通常の50%~60%です。

 

ただ、単純にこの密度で移植したら、前述したように移植した場所の周りの髪へ悪影響を及ぼし、周りの髪がぬけてしまったり、移植した髪が定着しなかったりしてしまいます。

 

そのため、通常の方の50%~60%密度で、安全に移植するためには、医師をはじめとしたスタッフや医療用具等の技術改善が必要です。ですから、どのくらいの密度で自毛植毛手術を行うかは、専門医にとっても、かなりデリケートな問題と言えます。

 

そういったところに注意して、専門クリニックの医師の話を聞いてみると、受診したクリニックの考え方や技術力をより深く理解することができるかもしれません。