女性の自毛植毛について

男性と女性の薄毛の原因

自毛植毛手術は、男性が受けることが多い治療法です。理由は、主に薄毛の悩みを持つ方が男性に多いからです。

女性も同じように薄毛の悩みを持つ方もいらっしゃいますが、男性と比べると少数です。

 

自毛植毛手術は、簡単に言えば、髪の毛を移動させる手術です。髪が多く見えやすい場所から、薄く見えてしまう場所へ移動させ、薄く見えづらくさせているわけです。

ただ、こう説明するとどこでも好きなように移動させて良いように感じさせてしまうかもしれません。実際は、生える場所によって髪の特性が違うため、その特性を生かした治療をしています。

さらに、髪を移動させるだけの手術なら、男性も女性も同じように扱ってよいかのような誤解を生じさせてしまうことがあります。これも大きな間違いです。当然、男性も女性も同じ原因ならば、同じ治療をすることもありますが、多くの場合、男性と女性は薄毛の原因となるメカニズムが違っています。

 

男性の薄毛の多くの原因は、男性ホルモンに起因する男性型脱毛症(AGA)が圧倒的に多いです。これは、ある程度、薄毛のメカニズムが解明されていますので、影響を受けづらい後頭部や側頭部の毛髪を移植する自毛植毛手術は、有効な治療法となります。

 

一方、女性薄毛の原因の多くは、CTE慢性休止期脱毛症でびまん性脱毛とも呼ばれ、男性型脱毛症と違い、生え際やつむじのあたりが集中的に薄くなるのではなく、びまん(弥漫)という言葉が示すように広く一面に薄くなることが特徴です。

この薄毛のメカニズムは男性型脱毛症と比べ、まだまだ不明な点が多い状況です。そのため、男性型脱毛症への対処のような決定的な治療法がありません。

しかし、まったく対処法がないと言うわけではありません。専門クリニックでは様々な治療をおこなっていますが、アスク井上クリニックでは、やはり、薬剤と自毛植毛手術の併用が基本的な対処となります。

 

CTE慢性休止脱毛症への対処

CTE慢性休止脱毛症への薬剤の目的は、AGA薬のように脱毛を防いだり、発毛を促したりといういような積極的な効果を期待するものではありません。髪の成長期の維持、成長期への転換を目的とした役割です。そのため、GF(グロースファクター)と呼ばれる成長因子を使用します。GFの特徴は、副作用がほとんどないことです。多くの薬剤は、副作用を考慮しながら、使用しなければなりません。もちろんAGA薬も同様です。

詳細は省きますが、GFの特性上、ほとんど副作用を心配することがないというのは、利用する上では大きなアドバンテージとなります。とはいえ、今までの経験から言えば、すべて状態で効果があるというわけではありません。例えば、瘢痕化した毛穴からの発毛は期待できません。逆にそういった場合は、自毛植毛手術で補います。

 

CTE慢性休止脱毛症への自毛植毛手術は、慎重な対処が必要です。多くのメカニズムは不明と申しましたが、自律神経に関連していることは、間違いありません。そのため、移植する毛髪を採取時や移植孔の作成時に回りの髪にストレスを与えないように配慮することが重要です。こういった注意をせず、通常の自毛植毛手術を行うような感覚で、手術してしまうとかえって脱毛を促進してしまうことにもなりかねません。

 

つまり、女性への自毛植毛手術は、より専門的な知識が必要で、侵襲を抑える高い技術が必要な手術と言えるもしれません。

自毛植毛で女性の生え際のラインの修正は可能か?

最近は自毛植毛を希望される女性が増えています。特に相談の多いケースが生え際です。生え際のヘアアラインを変えたいという要望が多く、どちらかというと男性的なヘアライン(いわゆるM字)で、髪型が常に限定されるのが悩みというものです。また、生え際というよりおでこが広くて・・・という方もいらっしゃいます。女性でもM字型の生え際だと見た目も男性的で“女性的なソフトな印象”には見えにくく、それが大きな悩みになってしまいます。また、女性の場合ウィッグの使用という手段もありますが、これは全体的に薄毛の場合には有効的ですが、生え際の場合、他人から分からないようにするには無理があります。また、若い女性の場合、ウィッグの使用自体抵抗感があり“使いたくない”ということに。

 

男性の場合、AGA治療薬が出ているのですが、女性の服用はできません。最近では女性用の内服薬も登場していますが、男性用の内服薬と同様に生え際への効果はほとんどありません。そうなると、この生え際の薄毛、ヘアラインの修正には自毛植毛が最も有効になります。

 

女性の生え際への植毛で多いのが《男性的なM字ライン》《部分的に薄毛になっている》

《ポニーテールのような髪を引っ張るヘアスタイルによる牽引性脱毛症》または《ケガなどによる傷跡が原因の脱毛》などです。

ただこの女性の生え際への植毛は注意が必要です。それは女性の生え際は男性に比べ全体的に細い髪の毛が多く、産毛のような細い毛も含めるととても繊細なものです。

ですから、単に後頭部の太い毛髪を移植しても、こうした女性らしい生え際にすることはできないのです。女性の生え際への植毛には、高い技術力と女性らしいヘアラインを作り出す美的センスが重要になるのです。

どの部分にどのくらいの太さの毛髪を移植していくか・・・女性らいしい優しい生え際にするための毛髪の種類の選択、そしてそれをなるべく小さな移植孔を作り移植する技術力。

これらが全て揃わないと、女性のデリケートでソフトな生え際を作ることはできないのです。

 

自毛植毛手術の場合、後頭部をメスで切り取り移植毛を作成する方法と、メスを使用しないで後頭部をバリカンで刈り上げて直接移植毛を採取する方法があるのですが、《後頭部をメスで切るのには抵抗がある》《後頭部を借り上げるとカツラをつけなければいけない》等の理由で自毛植毛の手術を受けたいのに、手術には躊躇してしまうという方がほとんどでしたが、最近ではこうした不安要素を取り除いた手術方法が登場しており、後頭部をバリカンで刈り上げずに1本ずつ移植毛を採取するという方法もあるので、これまで手術を躊躇されてきた方は、この《後頭部を刈り上げない自毛植毛》を検討されてみてはどうでしょうか。

 

自毛植毛は男性だけでなく女性の薄毛にも有効な《薄毛治療》と言えるでしょう。

自毛植毛手術の医学的な評価

専門性の高い分野について、行われていることが妥当であるか、もしくは不適当であるかを判断することは、とても難しいものです。

私自身、コンピューターやプログラムについて、専門的な知識を持っていないため、HPなどの打ち合わせの際は、担当が話していることが一般的に言って正しいことなのか判断ができない場合があります。

私は、そういった時、他の何人かの専門家に同じことを聞いてみます。そうすると同じ意見であったり、まったく逆の意見があったりして、そのことが正しいかどうか、凡その判断ができます。これは、科学的なやり方とは言えませんが、時間が無い時に素早く決断するためには、有用な手段であると思っています。

 

さて、話は大分横道にそれてしまいましたが、専門クリニックで行われている薄毛治療が、有効な方法であるか判断する一つの材料として、日本皮膚科学会が、『男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版』が公開されています。

 

これは、まさに専門性の高い分野である薄毛治療について、医師、患者双方へ標準的な治療法を提示するため、専門家が治療法のエビデンス(科学的根拠)を精査し、推奨度を5つのランクに分けています。

具体的には、A(行うことを強く勧める)、B(行うよう勧める)、C1(行っても良い)、C2(行わないほうが良い)、D(行うべきでない)に分かれています。簡単に言えば、A~C1までは、エビデンスの確かさでランクわけされていて、C2、Dについては、有効なエビデンスがない、もしくは有害であるデータがあるというものです。

 

これに基づく代表的な薄毛治療法の評価は次のようになります。

 

男性型脱毛症に対して

推奨度A :フィナステリド内服、デュタステリド内服、ミノキシジル外用

推奨度B :自毛植毛手術

推奨度C1:

推奨度D :人工毛植毛手術

 

女性型脱毛症に対して

推奨度A :ミノキシジル外用

推奨度B :

推奨度C1:自毛植毛手術、

推奨度D :人工毛植毛手術、フィナステリド内服、デュタステリド内服

 

 

これを見ると男性型脱毛については、フィナステリド内服、デュタステリド内服、ミノキシジル外用、自毛植毛手術が薄毛治療に有効な科学的データがあり、女性型脱毛症については、ミノキシジル外用、自毛植毛手術が薄毛治療に有効な科学的データがあるということになります。

 

ただ、薬剤の治療については、副作用の報告も同時になされています。

例えば、デュタステリド内服では、主にインポテンツや、射精障害が副作用として報告されていて、20歳未満への安全性、長期服用の効果増減、投与中止後の効果増減については、検討されていないと報告されています。

つまり、服薬では必ず副作用を考慮しないといけない点、未成年の服用、服用をやめたときの効果がどうなるかという問題があることを指摘しています。

 

また、植毛手術については、人工毛植毛について、過去に有害な報告が多数あるため、医療法上の問題はないが、安全性について高い水準のエビデンスが得られるまで、実施すべきないとしています。

FUEとFUT後頭部の傷跡が残りやすいのはどっち?

 

FUEとFUT 移植毛を採取した後の後頭部の傷はどちらが残りやすいか?

結論から言うと、厳密にはどちらの植毛手術法も後頭部の採取後の傷は残ります。

あとはその傷が目立つような大きさの傷なのか、目立たない小さな傷なのかの違いだけです。

まず、FUT(メスを使用して後頭部から帯状に頭皮ごと切り取りそれを株分けする方法)の場合、ドナーとして後頭部の毛髪を皮膚ごとメスで切り取り、一株ずつに株分けします。

本数にもよりますが大体幅2〜3cm、長さ20cmほどの頭皮を毛髪ごと採取したあとは、きれいに縫合します。この縫合も単純に縫い合わせるだけでなく、内側、外側と傷が開かないような特別は縫合をします。この縫合した部分が後頭部の傷跡になるわけです。この縫合跡は長さ約20cmの線状の傷跡になり、髪の毛で隠れてしまうのでほとんど目立たなくなります。但し、体質等により傷跡が肥厚性瘢痕を起こし傷が赤く盛り上がって傷跡が目立つようになり、さらに進行し酷くなるとケロイドになります。また頭皮が上下に引っ張られて傷にテンションがかかり、縫合跡が広がってしまうことがあります。こうなってくると後頭部の傷跡が目立ってしまい最悪の場合、形成外科的な外科手術で傷跡を切除し再縫合し傷跡を消すか、FUEによる植毛手術で目立つ傷跡にカバーリング植毛し傷跡を目立たないようにするしかありません。

 

一方FUEの場合、後頭部から移植毛を採取する方法は、口径0.9mm〜1.2mmほどの筒状のパンチを使って後頭部から直接毛髪を一本一本抜いて採取します。最近では口径0.85mmとさらに小さな口径のパンチを使用しているクリニックもあるようです。この移植毛を採取した後にパンチによる小さな丸い傷がFUEの後頭部の傷になるわけです。なるべく小さな口径で採取すれば、その分傷跡も小さくなるというわけです。ただ、後頭部の髪の毛は前髪等に比べ太くてしっかりしているため、あまり口径の小さいものだと髪の毛を切断したり細胞の部分を傷つけてしまったりするので、相当の経験値と技術がなければ難しいものになります。だからといって口径が大きなパンチを使って採取すれば、必然的に目立つ大きさの傷跡を残してしまいます。ですからFUEは豊富な症例数と高い技術が必要になるのです。

 

FUEの後頭部の傷跡は丸く白い点状のものですが、小さな口径で採取できればほとんど目立たない程度のものですが、採取する際全体のバランスを考慮しながら採取しないと、丸い傷が偏ってしまったりして、まるで虫食いのようなかなり目立つ傷跡になってしまいます。

髪の毛が伸びてしまえばほとんど分かりにくいのがFUEの特徴なのですが、こうした偏った虫食い状態になってしまうと、後頭部の髪の毛が明らかにスカスカに見えてしまったりして、植毛して前髪は薄毛に見えなくなっても、後頭部が薄毛に見えてしまうことになります。本来、FUEの後頭部の採取跡は、髪の毛をかきあげてもほとんど分からないぐらいの

採取方法で、床屋さんにいってもほとんどバレません。FUTと同じように体質的な個人差があるので、傷跡が目立ってしまうかたもいるかもしれませんが、FUTに比べ患者への負担も少なく、小さな口径のパンチでの採取ですから、術後の腫れや痛みもほとんどないのがFUEと言われています。

 

後頭部の傷跡が目立たないようにするには、FUT、FUEどちらも多くの症例数、実績、高い技術を持った医師が在籍しているクリニックを選ぶことが一番重要なのです。

移植毛の選定について

 

自毛植毛手術において、移植毛の選定は重要な作業になります。後頭部や側頭部の毛髪を利用しますが、これは生理学的にAGA(男性型脱毛症)が起こりづらいからです。採取する際は、元気な移植毛を選んで、傷つけないように注意します。傷ついた移植毛は、分単位で徐々に弱ってしまい、移植した際に生着しない原因になってしまいます。逆に傷ついていない元気な移植毛は、保存液に入れておけば簡単には弱りません。

手術時間が、短いほど移植毛が弱らないという考え方もありますが、移植毛が傷ついていなければ、大きく弱るということはありません。つまり、元気な移植毛を傷つけないよう丁寧に採取することが最も重要になるのです。

 

また、移植毛の選定については、元気なものであることは大きな条件ですが、移植する場所によって採取する移植毛は変わります。

 

例えば、ボリュームが必要な大きなスペースでは、大きな移植毛を使います。大きな移植毛は、毛髪が太かったり、数が多かったりするため、ボリュームが出やすい特徴があります。ただ、小さい移植毛に比べ、移植した際に周囲へのストレスを与えてしまうというデメリットもあります。しかし、大きなスペースでの移植では、適切な間隔をとることで、そういったマイナスの影響を抑えることができます。

反対にボリュームより、密度を優先させたい場合もあります。つむじは、まさにそんなケースに当てはまります。そういった場合に大きな移植毛を使うとデメリットが強調されてしまい、せっかく移植手術をしても本数のわりに地肌が見えてしまいます。

このような場合は、大きな移植毛でなく、あえて1本毛で太い移植毛を使います。こうすると周囲への影響を抑えながら、密度を増すことが可能で、地肌が見えづらく、患者の満足度も高くなります。

 

ボリュームと密度以外の条件としては、移植手術をした後で、いかに自然に見えるかというものもあります。自毛植毛手術を行い薄毛の問題を解消したつもりでも、「いかにも何か特殊なことをやった」というような違和感を与えてしまっては、手術をした意味が半減してしまいます。

このような印象を与える原因は、不自然な生え際のラインなど、移植のデザインが影響することが多いのですが、移植毛の選び方も影響します。

例えば、女性の生え際の最前列などは、どんな移植毛を使用するか特に注意が必要な場所になります。女性の生え際を注意深く観察すると非常に細い産毛が生えていることがわかります。そのような場所には、ただ、1本毛を移植しても不自然です。専門クリニックよって対処は違うかと思いますが、アスク井上クリニックでは、襟足近くの軟毛を採取し、出来るだけ自然な印象になるよう移植しています。

 

このように移植毛の選定は、様々な条件が考慮されます。適材適所の言葉通り、限られた資源を有効に活用することが大切なのです。